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フッ素がむし歯予防に効果的な理由って? 正しい使い方を知って大切な歯を守ろう

フッ素がむし歯予防に効果的な理由って? 正しい使い方を知って大切な歯を守ろう

フッ素は「子どもにオススメ」「むし歯予防に効果的」などのポイントをよく耳にしますが、実際にどのような役割や効果があるのかご存じですか? 今回は、フッ素の特徴や歯に作用する仕組み、セルフケアや歯科医院での有効的な取り入れ方などを詳しくお伝えします。

更新日: 2023.12.26 口から始める健康づくり

Supervisor監修者

株式会社オーラルケア 歯科衛生士


株式会社オーラルケア 歯科衛生士

スウェーデンで確立された、予防歯科の考え方と実践方法を熟知している“予防のエキスパート”。エビデンスに基づいた歯を守る方法とその重要性について、幅広く情報発信を行なっています。歯科医療従事者、企業・団体、一般生活者に向けて、セミナーや教育活動を展開中です。

フッ素の基本情報

はじめに、フッ素の安全性や作用する仕組みなど基本情報を紹介します。

フッ素とは?

フッ素はミネラル(無機質)の一種で、体の中や自然界にも多く存在しています。海藻やお茶、肉、果物など幅広く含まれているため、多くの方が知らず知らずのうちにフッ素に触れています。

体の中や食べ物にも含まれていることからもわかるように、フッ素は過剰に摂取しなければ効果的に利用できるものなのです。

フッ素の安全性

フッ素単体では毒性があるものの、ほかの物質とくっついたフッ化物の状態になると安全に使えます。

一般的にフッ素を単体で使うことはありません。歯みがき粉やマウスウォッシュなどに含まれているのもフッ化物です。私たちが生活の中で目にするほとんどのものは、危険性がないと考えて良いでしょう。

「フッ素は危険」との情報もありますが、これはあくまでも濃度の高いフッ素やフッ化物を過剰に取り入れた場合の話です。適量を適度な濃度で使うことで、フッ素を効果的に使用できます。

フッ素が作用する仕組み

歯の主成分は、カルシウムやリン酸などが含まれる「ハイドロキシアパタイト」という結晶です。ハイドロキシアパタイトはむし歯菌が出す酸に弱く、酸の影響を受けて唾液中に溶け出す性質があります。

このハイドロキシアパタイトに、フッ素(フッ化物)が結びつくことで「フルオロアパタイト」という強い結晶に変化し、酸で溶けにくい歯になるのです。

むし歯予防にフッ素が効果的といわれる理由

フッ素には、主に3つの効果が期待できます。ここでは、むし歯予防にフッ素が効果的といわれる理由を詳しく見ていきましょう。

① むし歯菌の活動を抑える

歯の表面に付いた歯垢の中には、むし歯や歯周病の原因菌が多く存在しています。フッ素を取り入れると、歯垢や口内にいる細菌の働きを弱める効果が期待できるのです。

むし歯菌の働きが弱まると酸の生成が落ち着くため、歯を溶かす原因をブロックし、むし歯の予防につながります。

② 歯の再石灰化を促す

むし歯菌が出す酸の影響で歯のカルシウムやリン酸は溶け出すものの、唾液が口内を中和する働きによって再び戻ることはご存じですか?

歯の成分が溶け出すのが脱灰、戻るのが再石灰化です。脱灰と再石灰化のバランスが崩れるとむし歯になりやすいため、脱灰の状態に偏らせないケアが必要です。

そこで活用したいのがフッ素。フッ素には、酸で溶け出したカルシウムやリン酸が再石灰化するのを促進させる効果があります。

③ 歯の質を強化する

歯にフッ素が入り込むと、歯の表面にあるエナメル質は安定した結晶構造になります。フッ素と結びつくことで、エナメル質が酸に強い性質に変化するのです。酸で溶けにくくなるため、歯が溶ける脱灰を抑える効果が期待できます。

参照:厚生労働省e-ヘルスネット

【セルフケア】フッ素を取り入れる方法と効果的な使い方

フッ素を取り入れる方法は、セルフケアと歯科医院で塗布する方法の2つです。ここでは、セルフケアでフッ素を効果的に取り入れる方法を具体的に紹介します。

フッ素入りの歯みがき粉やマウスウォッシュを使用

セルフケアで最も効果的にフッ素を取り入れる方法は、フッ素入りの歯みがき粉やマウスウォッシュを使用することです。フッ素が配合されたタイプの歯みがき粉を使って歯みがきすると、歯の表面を強化し酸に溶けにくい歯にする効果が期待できます。

マウスウォッシュも同様に、口内全体に行き渡らせて歯の表面をコーティングするように使いましょう。フッ素が配合されているかを確かめるには、歯みがき粉やマウスウォッシュの成分表をチェックしてください。

フッ素(フッ化物)成分の配合表示
  • フッ化ナトリウム
  • モノフルオロリン酸ナトリウム
  • フッ化第一スズ

使用回数の目安:一日2回

フッ素が配合された歯みがき粉を使用した歯みがきは、就寝前を含めて一日2回を目安に行ないましょう。

注意点はブラッシングの強さです。研磨剤が多く入っている歯みがき粉で強くブラッシングすると、歯を傷つける可能性があります。フッ素は強く磨くほど取り入れられるわけではないため、やさしい力で丁寧に磨いてください。

むし歯予防に効果的なフッ素の濃度

一般的に販売されている商品のフッ素配合濃度は、最大1500ppmFとなっています。商品によって濃度が異なるので、購入時にパッケージなどで濃度のチェックを忘れずに。

【年齢別】使用濃度の目安

フッ素の使用濃度は、年齢によって目安が異なります。一般的に子ども用の歯みがき粉は1000ppmF程度に調整されているものが多いですが、選び方が心配な場合は歯科医院で相談してください。

年齢

フッ素濃度の目安

歯みがき粉の量の目安

歯が生えてから〜2歳

900〜1000ppmF

米粒程度(1〜2mm程度)

3〜5歳

900〜1000ppmF

グリーンピース程度(5mm程度)

6歳〜

1400〜1500ppmF

歯ブラシ全体(1.5cm〜2cm程度)

出典:「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」4学会(日本小児歯科学会・日本口腔衛生学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会)合同の提言(普及版)より 

効果的な使い方① 歯みがき後のうがいは軽くゆすぐ程度

うがいをしすぎるとフッ素を洗い流してしまい、効果が弱くなる可能性があります。歯みがき後に少量の水を含んだら、口内全体を一度ゆすぐ程度に留めましょう。

フッ素入りのマウスウォッシュは、歯みがき後にプラスして使うのがオススメです。歯みがきで歯垢を除去できたら、口内全体に行き渡らせるように20〜30秒ぶくぶくとゆすぎ、吐き出してください。

効果的な使い方② 就寝前に使う

就寝中は唾液の分泌が抑えられて口内が乾燥するため、むし歯菌の活動が活発になるタイミングです。

就寝前にフッ素入りの歯みがき粉やマウスウォッシュを使用すると、細菌の働きを抑制する効果が期待できます。

【歯科医院】フッ素を取り入れる方法と効果的な使い方

歯科医院でフッ素を取り入れる方法と、効果的な使い方をお伝えします。

濃度の高いフッ素の塗布

歯科医院では高濃度のフッ素塗布が可能です。高濃度のフッ素塗布は歯科医院でしかできない施術なので、セルフケアとあわせて定期的に取り入れるのをオススメします。

【子ども】歯の質を守るために効果的

乳歯は歯の表面のエナメル質が薄く、歯の構造も十分にできあがっていません。また生え変わったばかりの永久歯もやわらかかったり、歯の表面がざらついていたりと不安定な状態です。

そのため子どもの歯は大人に比べてむし歯になるリスクが高く、フッ素塗布が効果的といわれています。濃度の高いフッ素を塗布することで、歯の質を守ったりむし歯予防の効果が望めたりと多くのメリットが得られます。

子どもは後に生えてくる永久歯のことも考え、定期的に歯科医院に通ってフッ素塗布をしておくのがオススメです。

【大人】歯の根元のむし歯予防に効果的

フッ素塗布は「子どもがするもの」というイメージがあるかもしれませんが、実は大人になってからも定期的に行なうことが推奨されています。大人が特に気にしたいのは、歯の根元部分のむし歯(根面う蝕)です。

年齢を重ねたり歯周病になったりすると、歯ぐきが下がって歯の根元部分が露出し、むし歯のリスクがアップ。歯の根元がむし歯になる前にフッ素を塗布することで、健康な歯を維持しやすくなります。

塗布の頻度の目安:3〜6ヶ月に一回

歯科医院でできる高い濃度のフッ素塗布は、3~6ヶ月に一度の塗布が目安です。継続して行なうことで、さらに効果が高まります。

歯の状態チェックやフッ素のコーティングのタイミングは個人差があるため、歯科医院で定期的に診てもらってください。

塗布後すぐのうがいや飲食は控えると効果的

歯に塗布したフッ素は、歯の表面に入り込んでエナメル質を強化します。そのため施術後すぐにうがいや飲食をすると、歯に塗布したフッ素を洗い流して効果を薄めてしまうのです。

歯科医院の指示に従って塗布後は30分ほど放置し、フッ素を安定させることでしっかりと効果を得られます。

フッ素の注意点

フッ素を効果的に取り入れるためには、一回の使用濃度や誤飲に注意する必要があります。フッ素を安全に使用するための注意事項をチェックしましょう。

過剰摂取による中毒

フッ素を過剰摂取すると、中毒症状が起こる場合があります。フッ素は食品にも含まれており、誰もが日常的に体内に取り入れているものです。しかしそのフッ素量は、ごく微量です。

デンタルケアで扱うフッ素の量は食品よりも濃度が高くなりますが、適切に使用していれば過剰摂取になりません。フッ素の用法・用量を守れば安全に使用できます。

過剰摂取による歯の形への影響

濃度が高いフッ素を頻繁に体内へ取り入れると、歯の形に影響を与える危険性があります。ただし中毒症状と同じく、市販の歯みがき粉や歯科医院でのフッ素塗布では問題がないものと考えて大丈夫です。

子どもの誤飲には注意

市販の歯みがき粉は安全につくられているものの、誤飲によって連続で体内に入ると腹痛や嘔吐などの中毒症状が表れる場合があります。子ども用の歯みがき粉はフルーツ風味といった子どもが好む味でつくられているため、飲み込んでしまう危険性もあります。

少量であればそこまで問題ありません。子どもの手が届かないところに置いて、歯みがきするときは側で見ていてあげると安心です。

斑状歯(はんじょうし:フッ素症)のリスク

斑状歯(フッ素症)とは、エナメル質がまだらになる症状です。特に歯の永久歯ができる時期に、体内に過剰なフッ素が入ることが原因となります。

子どもがフッ素を取り入れる際の注意点としてよく挙げられる症状ですが、国内では水や食べ物でフッ素を過剰摂取する機会がないため、大きな心配はいりません。

市販の歯みがき粉や歯科医院でのフッ素塗布でも問題ないので、斑状歯のリスクは知識として覚えておく程度で大丈夫です。

フッ素の効果的な使い方を学んで、むし歯予防に役立てよう

フッ素には、歯の質を強くしたり歯の再石灰化を促進させる効果が期待できます。

特に子どもの乳歯や生えたての永久歯はやわらかくむし歯になりやすいため、積極的な塗布がオススメです。大人も歯の根元のむし歯を防ぐ効果が期待でき、幅広い世代に推奨されています。

フッ素を取り入れる方法はフッ素入りのアイテムを使った口内ケアと、歯科医院での高濃度のフッ素塗布です。セルフケアを継続して行なったうえで、3~6ヶ月に一回のペースでフッ素を塗布するとむし歯予防の効果を高められます。

フッ素を効果的に使って、健康な歯をキープしましょう。

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