唾液の量を増やす6つの方法! 体内での働き&唾液が少なくなる原因もチェック
無意識のうちに、いつも口の中をうるおしてくれている「唾液」。分泌量が減ってしまうとさまざまな口内トラブルにつながることをご存じですか? この記事では唾液の基本的な役割から、分泌量が減ってしまう原因、そこから起こる口内トラブルについて説明します。さらに唾液の量を増やす6つの方法を紹介! 口の健康づくりにぜひお役立てください。
体内における唾液の働き
健康な成人だと1日で500~1500mlほど分泌される唾液。まずはその仕組みと役割について紹介します。
唾液が分泌される仕組み
唾液は唾液腺と呼ばれる器官でつくられ、大きく分けて下記の2種類になります。
・日中何もしていないときに出てくる【安静時唾液】
・食べ物を口に含んだときに、舌や粘膜に触れて分泌される【刺激時唾液】
それぞれ成分や粘度は少し異なりますが、一般的に副交感神経が刺激を受けると分泌され、交感神経が刺激を受けると抑制されるといわれています。
唾液の役割
唾液には「口内の細菌を洗い流す」「粘膜を保護する」「歯がすり減るのを防ぐ」「むし歯になりにくくなる」など、口の健康に欠かせない多くの役割があります。その働きについて詳しく見ていきましょう。
役割① 口の中をキレイにする
唾液は食後に残った食べかすを洗い流し、口内をキレイにしてくれます。
食べかすが口内に残ったままだとむし歯菌のエサとなり、口内環境が悪化する原因に。食べかすを洗い流すためにも、食後は水分を口に含むと良いでしょう。
役割② むし歯を防ぐ
食後は口内が酸性になります。そのため歯の成分が溶けて、むし歯ができやすい環境に。しかし唾液には、酸性化した口内を中和して元に戻す力が備わっているのです。
一般的には30~40分程度で口内が元の状態に戻ります。ただし、唾液の分泌量が少ないとそれ以上かかることも。ガムなど噛み応えのあるものを噛んで、積極的に唾液を出すようにしてください。
役割③ 口内の保湿・保護
唾液には“ムチン”と呼ばれる成分が含まれています。この成分特有の粘り気により、口内の保湿や、歯・食材による粘膜の傷つきを防ぐ効果があります。
役割④ 消化を助ける
唾液に含まれる“酵素(アミラーゼ)”が食べ物に含まれるデンプンを分解。胃や腸で消化・吸収をサポートします。
そのため食事の際は、しっかりと噛んで時間をかけて食べることが大切です。どうしても時間がないときは、消化の良い食べ物を選びましょう。
役割⑤ 食べ物を飲み込みやすくする
チャーハンやグラノーラなどのパラパラしたもの。水分量の少ないパサパサしたもの。これらを食べたり飲み込んだりできるのは、唾液によって食べ物が口の中でまとまるからこそ。もし唾液の分泌がなければ、誤嚥(ごえん)にもつながりかねません。
唾液の分泌量が少ないと感じるときは、コップに水やお茶を用意しましょう。ただし、ときおり口に含む程度がベスト。水分が多すぎると噛む回数が減り、食材が酵素で分解されずに胃へ送り込まれます。胃腸への負担を考慮して、食べ物を水で流し込むことは避けてください。
役割⑥ 食べ物を美味しくする
食べ物の味をキャッチする舌の組織・味蕾(みらい)。この味蕾へ唾液に溶け出た食べ物の成分が届くことで、美味しさがしっかりと感じられます。
役割⑦ 入眠をスムーズにする
唾液にはメラトニンと呼ばれるホルモンが含まれています。夜になると、このメラトニンの分泌量が増加。脳や体を眠りに入りやすい状態に切り替えてくれます。
役割⑧ ウイルスの侵入を防ぐ
口内の粘膜は、体が外部と接触する場所。外からウイルスや細菌が侵入しやすいため、唾液の中には抗菌物質が含まれています。この抗菌物質は口内でウイルスと戦ったり細菌の増殖を妨げたり、普段から私たちの健康を守ってくれます。
唾液の分泌量が少なくなる原因
唾液の量が日頃どのくらい出ているかを気にする機会はあまりないでしょう。しかし、日常のあらゆる場面に唾液の分泌量が減ってしまう原因が隠れています。一つひとつ詳しく見ていきます。
ストレス・緊張
唾液は、副交感神経が優位な状態だと分泌が促進されます。反対に、ストレスを受けると交感神経が優位となり、唾液の分泌量が減ってしまうのです。
また緊張状態でも唾液が少なくなる傾向に。緊張が長時間にわたる場合は、適度に水分補給をしましょう。
口呼吸
口呼吸は分泌された唾液が蒸発しやすく、口内をより乾燥させます。口呼吸が慢性化している方は、歯科医院に相談してみましょう。
またマスクをすると、息苦しさから口呼吸になりやすいため注意が必要です。マスク内に湿気がこもって口の中がうるおうように思われますが、口呼吸によって実は乾燥しているケースが少なくありません。マスク着用中は、こまめに水分を摂るなどしてください。
口周りの筋力の低下
年齢を重ねるごとに落ちていく口周りの筋肉。放っておくと噛む力の衰えや噛む回数の減少につながり、唾液の分泌量の低下にも影響します。そのため、何かしらの対策が欠かせません。
「あいうべ体操」などがありますが、日常生活の中で食べ物をよく噛む習慣を身につけることも大事です。たとえば自然と噛む回数が増える「食物繊維の多い根菜類」や「弾力性のあるイカ・タコ」を料理で使ったり、一日の中でガムを噛む機会を増やしたり。ライフスタイルに合わせて取り入れながら、口周りの筋力トレーニングを意識しましょう。
薬の副作用
薬には副作用として唾液の分泌を抑えるものがあります。睡眠薬・高血圧治療薬・抗ヒスタミン薬・抗うつ薬などがその代表例。
服用する薬の数が増えると、唾液の分泌量が減ることもわかっています。薬が増えて口内の乾燥を感じるようになったときは、医師に一度相談してみてください。
更年期障害
女性ホルモン(エストロゲン)の低下にともない、唾液の量が減って口内が乾燥しやすくなります。更年期とは一般的に45~55歳といわれ、40代後半でその症状を本格的に感じることが多いようです。
症状の程度は人それぞれです。更年期の症状に加えて口内の乾燥が気になる方は、歯科医師に相談するようにしましょう。
唾液の量が少ないときに起こりやすい口内トラブルとは?
唾液の量が減ると口内環境が悪化しやすくなります。理由は「細菌を洗い流せない」「食べかすやプラーク(細菌のかたまり)がたまりやすくなる」「口の中を保護する機能が低下する」から。その結果、以下のような歯や粘膜のトラブルが生じる恐れがあります。
むし歯や歯周病になりやすくなる
唾液が減ると口内の細菌を洗い流せず、食べかすやプラーク(細菌のかたまり)がたまりやすくなります。さらにプラーク(細菌のかたまり)の粘度が高くなり、歯みがきで落としづらい状態に。こうした要因が組み合わさって、むし歯や歯周病の発症リスクが高まるのです。
口内炎ができやすくなる
役割③で唾液が口内の粘膜を保護する役割についてお伝えしました。唾液が少なくなれば、粘膜が傷つくリスクが増加。特に歯が当たる頬の内側・唇・舌の横といった場所は、口内炎ができやすくなります。
口臭が発生する・悪化する
普段から細菌や食べかすを洗い流してくれている唾液。減少すると口内に汚れがたまって細菌が増殖します。増えた細菌はニオイのもととなるガスを放出。口臭の発生や悪化につながります。
嚥下(えんげ)や会話がしにくくなる
唾液が減少してしまうと、食べ物を噛んで飲み込む動作に支障が出てきます。さらに、唾液が少ない状態では舌がもつれて発話しにくくなる可能性も。会話が億劫になり、人とのコミュニケーションが減ってしまう恐れがあります。
唾液が減ることで「食べ物が飲み込みにくい」「呂律(ろれつ)がうまく回らない」といった悩みを抱える方は、早めに歯科医院に相談しましょう。
誤嚥性肺炎を起こしやすくなる
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、食べ物や唾液が誤って気管に入った際、肺の中に細菌が入り込むことで起こる症状です。唾液の少ない状態だと口内の細菌が増加。それとともに食べ物や唾液につく細菌の量も増え、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなります。
唾液の量を増やす6つの方法
日々当たり前に分泌される唾液。しかし日常生活の中で唾液が減ってしまうシーンがあります。どんなことに気をつければ、唾液を効率よく増やせるのか。より快適な毎日を過ごせる6つの方法について紹介します。
方法① こまめに水分を摂る
体の水分が不足していては、唾液も分泌されにくくなります。口内を乾燥させないためにも、こまめな水分補給が大切。その際はノンカフェイン・ノンシュガーのものがオススメです。水や麦茶などを選んでください。
方法② よく噛んで食事をする
唾液の分泌は、食べ物を噛むことで促進されます。噛む回数の目安は「1口20~30回」。とはいえ、意識していないと1口30回は難しいものです。以下のような工夫をして、噛む回数を増やしましょう。
・食材のサイズを大きめにカットしてみる
・煮込む時間を短くする
・ひと口を小さくして口に入れる回数を増やす
注意が必要なのは“ながら食べ”。「テレビやスマホを見ながら」「仕事をしながら」の食事は噛む回数が減る原因に。ひと口食べるごとにしっかり噛んで味わうことが、唾液分泌の助けとなります。
方法③ 鼻呼吸を意識する
口呼吸が習慣化すると、口内が乾燥しやすい状態に。マスクの着用時も口呼吸になりがちなので要注意です。日頃から鼻呼吸を心がけて、唾液の蒸発を防いでください。
原因が鼻炎や歯並びの悪さによる場合は、専門家に相談してみましょう。
方法④ 舌を動かすトレーニングをする
舌を動かすと唾液腺が刺激され、唾液が出やすくなります。リラックスした状態で舌を上下・左右に動かすだけでも効果的です。唾液の量が少ないと感じる方は1日2回、朝晩に実践してみると良いでしょう。
方法⑤ 唾液腺をマッサージする
唾液腺とは、唾液の分泌を促す器官のこと。種類は「耳下腺(じかせん)」「舌下腺(ぜっかせん)」「顎下腺(がっかせん)」の3つあります。唾液の分泌を良くするには指圧マッサージが効果的です。特に唾液が少ない朝の起床時や、食事前などに行なってみてください。
ただし効果が得られるのは一時的。ほかの方法と組み合わせてみましょう。
方法⑥ リラックスする
リラックスすると副交感神経が優位になり、唾液が分泌されやすくなります。お風呂に入ったり、好きな音楽を聴いたり。1日の中でリラックスできる時間をつくりましょう。
唾液の量を増やして、口内トラブルを予防しよう
よく噛んで食べることや唾液腺マッサージなど、唾液の分泌を増やすにはさまざまな方法があります。今日から実践して健やかな毎日を手に入れましょう。
「いろいろと試してみたものの改善されない」といったときには、専門家への相談も検討してください。
Supervisor監修者
株式会社オーラルケア 歯科衛生士
スウェーデンで確立された、予防歯科の考え方と実践方法を熟知している“予防のエキスパート”。エビデンスに基づいた歯を守る方法とその重要性について、幅広く情報発信を行なっています。歯科医療従事者、企業・団体、一般生活者に向けて、セミナーや教育活動を展開中です。
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