食べ物を噛む回数を増やそう! よく噛んで食事をする10のメリットとコツを紹介
食べ物を噛む回数を増やすことで、私たちは実に多くのメリットを得られます。しかし「よく噛んで食事をするべきとは聞くけれど、具体的にどんなメリットがあるのかわからない……」という方もいるのではないでしょうか。今回は噛む回数を増やす10のメリットや、噛む回数を増やすコツをお伝えします。
Supervisor監修者
株式会社オーラルケア 歯科衛生士
スウェーデンで確立された、予防歯科の考え方と実践方法を熟知している“予防のエキスパート”。エビデンスに基づいた歯を守る方法とその重要性について、幅広く情報発信を行なっています。歯科医療従事者、企業・団体、一般生活者に向けて、セミナーや教育活動を展開中です。
現代人は食べ物を噛む回数が減っている!
現代の日本にはハンバーグやパスタ、牛丼、ケーキなど、食の種類が豊富にあります。なかでも、現代人はやわらかいものや欧米の食事、食べるのに時間がかからない食事を好むようになりました。
その結果、噛む回数が大きく減少しているのが実情です。しかし、噛む回数を増やすことは、私たちにたくさんのメリットを与えてくれます。
咀嚼は“ひと口につき30回がベスト”とよくいわれますが、なかなか難しいうえに30回も噛んでいると逆に美味しくなくなってしまう可能性も。また、「仕事や育児が忙しく、ゆっくり食べる時間がとれない」「たくさん咀嚼できる料理を提供している飲食店が少ない」など、現代の生活で噛む回数を大きく増やすのが難しい背景もあります。
まずは噛む回数を増やすメリットを知って、少しでも咀嚼回数を増やせる生活を意識してみませんか?
噛む回数を増やす10のメリット
噛むことは食事だけではなく、健康的な体をつくったり集中して物事に取り組めたり、私たちの生活に欠かせないたくさんのメリットがあるのです。
それでは、充実した毎日につながるメリットを10個紹介しましょう。
肥満を防げる
噛む回数を増やすことは、肥満の防止につながります。咀嚼を増やすことで脳の満腹中枢が刺激され、早い段階で満腹を感じやすくなることはご存じの方も多いのではないでしょうか?
満腹中枢を介して交感神経が刺激されることにより、内臓脂肪の燃焼が活発になるのもポイントです。よく噛むことで体の熱生産が高まり、カロリー消費がアップすると考えられています。
消化が良くなる
しっかりと噛んで食事をすることは、消化を良くする効果もあります。よく噛むと食材が細かくなり、また唾液中に含まれるアミラーゼ(消化を手助けする酵素)が活性化して消化しやすくなり、胃の負担を減らせます。
胃や腸への負担を減らしたい方は、消化を良くするためにも噛む回数を増やしてみてはいかがでしょうか。
歯の病気を予防する
噛む回数が増えると唾液が多く分泌されることから、歯の病気の予防・口内の健康につながるのもメリットといえます。
食事を取った後の口内は酸性になっていて、歯のエナメル質が溶けやすい状態です。唾液には、酸性に傾いた口内を中性(元の状態)に戻す働きがあります。加えて殺菌作用もあることから、むし歯や歯周病といった歯や歯ぐきの病気の予防につながるのです。
また、唾液には保湿効果もあります。唾液の中に含まれる水分やムチンという成分は、口の粘膜をウイルスの侵入や刺激から守ってくれるのです。歯みがき以外に歯や口の健康を保つ方法としても、しっかり噛んで唾液をたくさん出していきましょう。
味覚が発達する
味は、食べ物が唾液と混ざることで感じられます。よく噛んでゆっくり食事を味わうと、食材本来の味を感じられるようになるのです。味覚が発達すると、繊細な味を感じられたり薄味で満足できたりと、より食事の時間を楽しめるようになります。
味覚の発達は、特に子どもの成長にとって重要です。子どもには濃い味の料理を避け、ぜひしっかり噛むよう伝えてください。
筋肉が発達し表情が豊かになる
噛む回数を増やすと、咬筋や口輪筋、頬筋といった口の周りの筋肉と側頭筋が発達します。これらの筋肉が発達すると、表情が豊かになる・言葉の発音が良くなる・顎や頬のたるみを防ぐなど、うれしい効果がたくさんあります。
口の周りの筋肉は、意識して鍛えなければ年齢とともに衰えてしまう筋肉です。また前述の効果を得るには、鍛えるだけでなく緊張をほぐすことも大事になります。いつまでも若々しくいたい方は、さっそく今日から積極的に噛むことを生活に取り入れていきましょう。
歯並びがキレイになる
噛む回数を増やすと、歯並びがキレイになるのもメリットです。筋肉が発達しやすい子どもは顎の発達も良く、歯並びが矯正されやすいといえます。よく噛むことで顎の筋肉が鍛えられ、顎の骨が広がるため歯がキレイに生えそろうスペースが確保できるからです。
現代人に歯並びのトラブルが増えているのは、咀嚼回数の減少に一因があるといわれています。
脳の働きが活発になる
噛む回数を増やすと、脳の働きが活発になることがわかっています。よく噛むことで顔の筋肉が動くと脳の血流が良くなり、脳の働きが活性化するという仕組みです。
特に、脳の前頭前野や海馬から出るドーパミンの働きが活発になるといわれています。ドーパミンはやる気を引き出すホルモンであることから、意欲的な毎日を送るのに役立つでしょう。また、考える・記憶するなどの働きを持つ前頭前野が活性化するので、高齢者はもちろん仕事や勉強に励む方には注目の効果です。
目の疲れを軽減する
少し意外かもしれませんが、噛む回数を増やすことは目の疲れの軽減にもつながります。眼精疲労の原因は、目の周りの筋肉の凝り。しっかり咀嚼すると目の周りの血流が活性化して筋肉の凝りが解消でき、目の疲れを軽減します。
スマホやPCでの作業が多い方にとって、眼精疲労はかなりのストレスになっているでしょう。目の疲れを癒すためにも食事はしっかり噛んで食べ、噛む回数を増やす工夫を取り入れてみてください。
ストレスを解消しリラックスできる
噛む回数を増やすと、ストレスが解消されるというメリットもあります。これは神経伝達物質のひとつで精神を安定させる働きのあるセロトニンが、咀嚼によって分泌されるためです。
セロトニンは、一定のリズムで同じ動きを行なうリズム運動で分泌されるのが特徴。噛むこともリズム運動のひとつです。ストレスをためこんでしまいがちな方は、食事だけでなくリズム運動が簡単に取り入れられるガムを活用してみませんか。
高齢になっても食べる能力を維持しやすくなる
歳を重ねると、食べ物を噛む力や飲み込む力は衰えてしまうものです。しかし噛む回数を増やして食事を続けていれば、高齢になっても食べる能力を維持しやすくなります。
子どもの頃からしっかり噛むことを意識し、高齢になってもその習慣を続けていると、食べる能力の衰えは緩やかです。食事を楽しめることは生きがいにもつながるため、とても大切なメリットといえるでしょう。
噛む回数を増やすコツ
よく噛んで食べる習慣がない方にとって、噛む回数を増やすのはなかなか難しいかもしれません。噛む回数を増やすには、いくつかのコツがあります。これらを参考に、少しずつ噛む回数を増やしてみてくださいね。
噛みごたえのある食材を選ぶ
噛む回数を増やすには、噛みごたえのある食材を選ぶのがコツです。大きめに切った食材や、しっかり噛む必要のある食材を積極的に料理に取り入れると、自然と噛む回数を増やせます。しっかり噛む必要のある食材をいくつか挙げたので、参考にしてみてください。
- ごぼう
- 切り干し大根
- きのこ
- こんにゃく
- タコ
- ナッツ
- 豆
- 雑穀ごはん
食材の調理法についても工夫しましょう。噛みごたえを残すために、煮る時間を短くしたり、調理方法を焼く・炒めるに変えてみたり、生で食べられる野菜は加熱せずに調理したりなどが大切です。
噛む回数を増やすオススメの料理もいくつか紹介します。献立に迷ったときには、ぜひこれらの中から食事を選んでみましょう。
- 生野菜サラダ(ナッツをトッピング)
- 切り干し大根の炒め物
- きんぴらごぼう
- こんにゃくステーキ
- きのこ汁
- タコの唐揚げ
- 豚肉の野菜巻き
料理は出汁を楽しめる味付けにする
噛む回数を増やしたいときには、出汁を楽しめる料理にするのもひとつの方法です。濃い味つけの料理は口に入った瞬間に味を感じられるため、少ない咀嚼回数で満足して飲み込んでしまいがちに。
一方、食材そのものの風味や出汁の味わいを楽しめるようにすると、料理をしっかり味わおうと噛む回数が増える傾向にあります。日本人が旨味に敏感である特性も活かして、出汁をメインとした味つけにチャレンジしてみましょう。
「ながら食べ」をしない
テレビやスマホを見ながら食べる「ながら食べ」は、噛むことから意識が逸れてしまうため、咀嚼回数を少なくする原因のひとつになります。噛むことや食事を味わうことに意識を向けるためにも「ながら食べ」は避けてください。
特に朝は、新聞やニュース番組が気になる方も多いと思います。朝ごはんの「ながら食べ」を防ぐためには少しだけ早く起きて、朝ごはんを食べる前後にニュースを確認できる時間をつくるのもオススメです。
ひと口を小さくする
噛む回数を増やすためには、ひと口を小さくするのも効果的です。口いっぱいに食べ物を入れるほうが噛む回数を増やせると思うかもしれませんが、実は逆! うまく噛めず、少ない咀嚼回数で飲み込んでしまうこともあるのです。その点ひと口を小さくすると、噛みやすくなって口に料理を運ぶ回数が増えるため、自然と噛む回数も増えます。ひと口を小さくするだけで噛む回数が増えるこのやり方は、食事で取り入れやすい方法ではないでしょうか。
スプーンで食べる料理の場合は、いつもより一回り小さいスプーンを使うのもオススメです。一回で口に運べる量が少なくなる分、時間をかけて食事ができるため、短時間で食べ終えてしまいがちな方にぴったりですよ。
口に食べ物があるときに水分を摂らない
口の中に食べ物が入っているときに水分を摂ると、たとえあまり咀嚼していなくても流しこめてしまいます。そのうえしっかり咀嚼されていないため、消化に時間がかかり胃に負担がかかる原因にも。口に食べ物があるときには、できるだけ水分を摂らないように気をつけることが大切です。
ガムを取り入れる
食事以外に噛む回数を増やす方法としてオススメなのが、日常的にガムを取り入れること。ガムは噛むためにつくられている食品で、食べ物の中でも噛む回数が多いのが特徴です。ガムは一定のリズムで噛めるため、「リズム運動」によってセロトニンが分泌されやすくなります。また、口をしっかり動かすことで血流が良くなるのです。
食事の前後、どちらかで取り入れることでカロリーの消費量が増えたり、ガムを噛むことで脳が活性化し仕事の効率が上がったりと、さまざまな効果をもたらしてくれます。
ただし、砂糖や水飴などむし歯の原因になる甘味料が使われているガムの場合、噛む回数は増えてもむし歯になりやすくなってしまう可能性が。ガムを取り入れるときには、むし歯の原因にならない甘味料や「キシリトール」が入っているものを選ぶようにするのがポイントです。
噛める健康な歯をつくる!
噛む回数を増やすためには、しっかり噛める健康な歯をつくることも大切です。最後に、健康な歯をつくるために必要なケアをお伝えします。
自分の口に合ったケア方法を見つける
健康な歯をつくるには、毎日の歯みがきがとても重要です。口内環境や悩みは人それぞれなので、自分の口に合ったアイテムでケアすることが必要となります。
歯ぐきやプラーク(細菌のかたまり)の状態に合わせて歯ブラシを選ぶようにしてみたり、むし歯になりやすい方はフッ素濃度が高い歯みがき粉を使ってみたり、まずは口内のトラブルを見極めて自分の口に合ったケアを行ないましょう。
むし歯や歯周病になりやすい場所を攻略する
歯と歯の間や奥歯など、普通の歯ブラシが届きにくい箇所がむし歯や歯周病になりやすい場所です。
そういった普通の歯ブラシではケアが難しい場所には、デンタルフロスやワンタフトブラシ、歯間ブラシなどを活用するのがオススメですよ。
アイテム名 |
特徴 |
使用箇所 |
ワンタフトブラシ |
毛束がひとつで、三角にカットされているブラシ |
・前歯の裏 ・奥歯 ・歯並びが悪い部分 ・矯正装置の周辺 など |
デンタルフロス |
指に巻きつけるもの(ロールタイプ)や持ち手がついているもの(ホルダータイプ)がある |
・歯と歯の狭い隙間 |
歯間ブラシ |
針金タイプやゴムタイプがある |
・歯と歯の広い隙間 |
歯科医院で口の環境を整えてもらう
自分で行なう毎日の歯みがきだけでは、ケアが完璧にできていないこともあります。長く自分の歯で噛むためにも、定期的に歯科医院へ通って口内の環境を整えてもらうことも大切です。
歯科医院では、セルフケアで落としにくい歯の汚れを取ってもらい、最後にフッ素のコーティングをしてもらえます。自分では気づかないうちにむし歯や歯周病の危険にさらされていることもあるので、そちらも一緒に確認してもらいましょう。
楽しみながら美味しく食べる! 噛んで味わう! を意識しよう
噛む回数が増えると唾液の分泌が増えて消化を助けたり、眼精疲労が解消されたりとさまざまなメリットがあります。
噛みごたえのある食材を選んだり、食事の時間をゆっくり取ったりして、噛む回数を少しずつ増やしましょう。さっそく今日の食事から、しっかり噛んで味わって食べてみてはいかがでしょうか?
商品やサービスを紹介いたします記事の内容は、必ずしもそれらの効能・効果を保証するものではございません。
商品やサービスのご購入・ご利用に関して、当メディア運営者は一切の責任を負いません。